技能ビザ

「技能」とは

「技術」は、本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動を行うための在留資格(ビザ)です。

「技能」に該当する仕事とは

「技能」とは、日本人で代替できない産業上の 特殊な分野に関する熟練した技能を有する外国人 に与えられるビザで、該当する職種はすべて法律 で列挙されているため、以下の職業に該当しない 場合には技能ビザには当てはまりません。具体的 には、以下の業務が該当します。

産業分野 具体的な職種
外国に特有の産業分野

1号:外国料理の調理人(コック)

2号:外国特有の建築様式の技術者

3号:外国特有の製品の製造や修理の職人など(例:外国特有のガラス製品、ペルシャ絨毯、外国特有の機械や設備など)

外国の技能レベルが日本より高い産業分野

4号:宝石、貴金属、毛皮を加工する職人

5号:動物の調教師

8号:スポーツの指導者

9号:ワインのソムリエ

日本に熟練技能労働者が少ない分野

6号:石油・地熱等の掘削調査をする技術者

7号:航空機のパイロット

※日本では、「技能」に該当する職種で最も多いのは「調理師(コック)」です。「調理師(コック)」の詳細については、コラム:「調理師(コック)」をご参照ください。

「技能」の在留期間

日本に滞在することのできる期間は5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかになります。在留期間は、出入国在留管理庁が申請人の素行、勤務先の企業規模や就労内容によって個別に判断します。

申請のポイント

要件
業務が、「技能」に該当する業務であること
日本にある会社(もしくは機関・個人店など)と「契約」を結ぶこと
会社(もしくは機関・個人店など)の経営状態に問題が無いこと
申請者の経歴(実務経験)が基準を満たしていること
日本人従業員と同等の給与水準であること
申請人の過去の素行が不良でないこと
過去の申請との矛盾が無いこと

① 業務が、「技能」に該当する業務であること

「技能」の在留資格で外国人の方が行う業務は、「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務」です。日本の裁判例では、「長年の修練と実務経験により身に着けた熟達した技量を必要とする業務」と判示されています。したがって、特別な技能、判断等を必要としない業務、たとえば単純労働などは「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務」と認められず、不許可となってしまう可能性があります。

② 日本にある会社(もしくは機関・個人店など)と「契約」を結ぶこと

「技能」の申請では、受け入れ先企業との間に契約が成立していることが前提となります。つまり、申請するときには、既に就職先の企業(もしくは機関・個人店など)に就職が決まっていることが重要です。そもそも就職が決まってないと「技能」の在留資格を得ることはできません。一般的に、日本にある企業に就職する場合には、企業と労働者の契約形態は雇用契約ですが、雇用契約以外でも派遣契約や請負契約でも許可される場合があります。

③ 会社の経営状態に問題が無いこと

「技能」が許可されるには、会社の経営状態が安定していることが必要です。通常は、申請の際に添付資料として決算書類関係(個人店の場合には確定申告書の控え)を提出します。大幅な赤字決算(申告)だと、申請者に給料を払えないのではないかと疑われてしまう可能性があります。しかし、単に経営状態が赤字だから在留資格を得られないというわけではなく、今後経営状態が安定する見込みを示すことができれば、許可の見込みはゼロではありません。また創業間もない企業(個人店)についても、実績が無く、決算書(確定申告書の控え)も提出できないことがあります。新設会社(店舗)で決算書(収支関係の書類)を出せない場合は、必ず事業計画書を作成して提出する必要があります。受け入れ先企業(個人店)の経営状態が安定していない場合や創業間もない企業(店舗)が外国人従業員を受け入れるに当たっては、専門家へご相談することをお勧めします。

④ 申請者の経歴(実務経験)が基準を満たしていること

「技能」の申請では、申請者が日本で行おうとする活動についての本人の実務経験が非常に重要です。そして、その実務経験について、申請者が在職証明書等によってそれを立証する必要があります。具体的には過去の勤務先から「在職証明書」を取得し、場合によっては在職証明書を公正証書にして、在留資格認定証明書交付申請書に添付して入国管理局に提出します。在職証明書には店名(会社名)、電話番号、住所、職種、実務経験年数が記載されている必要があります。過去の勤務先が倒産などで現存していない場合は在職証明書を取ることができませんので、実際に勤務していた過去があったとしても提出できない以上実務経験として扱われることは非常に難しくなります。

職種によって必要な実務経験の年数が異なっており、それぞれの職種ごとに以下の表にまとめました。

技能の種類 必要とされる実務経験
外国料理の調理師(コック) 10年以上※1
建築技術者 10年以上※2
外国製品の製造・修理 10年以上※3
宝石・貴金属・毛皮加工 10年以上※4
動物の調教 10年以上※5
石油探査の海底掘削、地熱開発の掘削、海底鉱物探査の海底地質調査 10年以上※6
航空機操縦士 250時間以上の飛行経歴※7
スポーツ指導者 3年以上※8
ソムリエ(ワイン鑑定) 5年以上※9

※1 外国の教育機関において当該料理の調理又は食品の製造に係る科目を専攻した期間を含む。(タイ料理の国家資格保有者については、5年以上)

※2 外国の教育機関において当該建築又土木に係る科目を専攻した期間を含む。(当該技能を要する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する者の場合にあっては、5年以上の実務経験)

※3 外国の教育機関において当該製品の製造又修理に係る科目を専攻した期間を含む。

※4 外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む。

※5 外国の教育機関において動物の調教に係る科目を専攻した期間を含む。

※6 外国の教育機関において石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含む。

※7 航空法第2条第18項に規定する航空運送事業用に供する航空機に乗り込んで操縦者としての業務に従事する者

※8 外国の教育機関においてそのスポーツ指導に係る科目を専攻した期間及び報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含む。(スポーツ選手としてオリンピック大会等の国際大会への出場歴がある場合には実務経験は不要)

※9 上記の実務経験に加えて、①国際ソムリエコンクールにおいて優秀な成績を収めたことがある者、②国際ソムリエコンクール(各国につき1名に制限されている大会)に出場したことがある者、③国または地方公共団体の又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格を有する者、のいずれかに該当する者

⑤ 日本人従業員と同等の給与水準であること

「技能」の申請では、申請者、すなわち外国人労働者が、日本人と同等の給与水準であることが必要とされます。これは、外国人に対する不当な差別を禁止する意味があります。具体的には、同じ企業(お店)で、同様の職務内容の日本人社員と同等の給与を支払う必要があります。注意点としては、「基本給」が日本人社員と同様である必要があるという点です。「基本給は他の日本人従業員よりも低いが、各種手当・賞与等を合算すると日本人と同様の給与水準になる」というような給与形態では、不許可になってしまう可能性があります。具体的な許可事例・不許可事例は「技能」ビザの事例(リンク)を参照して下さい。

⑥ 申請人の過去の素行が不良でないこと

「技能」に限らず、日本の在留資格の申請では、申請人の過去の在留状況が非常に重要です。申請人に、過去に重大犯罪や入管法・旅券法違反がある場合には、原則として在留資格は認められません。そして、前科だけでなく、過去の在留履歴、たとえば「留学」中の出席率、アルバイトの時間数(法定の時間数を超えて働いていないか)などの素行も厳しく審査されます。1つでも前科や不良歴があると在留資格の取得が不可能なわけではなく、今後日本で善良に在留することが書類から明らかであれば、在留資格取得の可能性はあります。このような場合には、専門家にご相談ください。具体的な不許可事例は「技能」ビザの事例(リンク)を参照して下さい。

⑦ 過去の申請との矛盾が無いこと

申請人が過去に日本に滞在していたことがある場合、または、現在も有効なビザをもって日本に滞在している場合には、過去の申請の内容と現在の申請の内容に矛盾が生じないようにする必要があります。 過去の申請で誤った記載をしてしまい、現在の申請と矛盾があると、虚偽申請を疑われて不許可になってしまう可能性があります。たとえば、過去の申請(3年前)では未婚と記載しているのに、今回の申請では結婚して10年が経過していると記載していたりする場合には、たとえ悪意がなく単なる間違いだったとしても、虚偽申請を疑われてしまう原因になります。過去の申請内容に虚偽や誤りがある場合には、今回の申請にあたってその点をしっかりと説明する必要がありますので、行政書士などの専門家にご相談することをお勧めします。

「技能」の審査期間

ビザの更新(在留資格更新許可申請) 2週間~1か月  ※実務上は、1カ月以上かかることもあります。
ビザの変更(在留資格変更許可申請) 2週間~1か月 ※実務上は、1カ月以上かかることもあります。
在留資格認定証明書交付申請 1か月~3ヵ月 ※実務上は、3カ月以上かかることもあります。

※日本では、学校や企業の年度が4月から始まることもあり、毎年1月から3月までは通常よりも審査の期間が伸びる傾向があります。

申請に必要な書類の例

  1. 申請書 1通
  2. 写真(縦4㎝×横3㎝) 1枚 ※申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの。
  3. 3返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上、380円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの) もしくは、はがき
  4. 履歴書
  5. 資格を証する書類
  6. 実務経験を証する書類
  7. 推薦状
  8. 活動の内容、雇用期間、報酬、地位などの待遇を記載した雇用契約書、採用通知書の写し、辞令等
  9. 会社の概要を明らかにする資料(パンフレット等)
  10. 招聘理由書

「技能」の上陸許可基準(基準省令)

申請人が次のいずれかに該当し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

一 料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者で、次のいずれかに該当するもの(第九号に掲げる者を除く。)

 イ 当該技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該料理の調理又は食品の製造に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者

 ロ 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定附属書七第一部A第五節1(c)の規定の適用を受ける者

二 外国に特有の建築又は土木に係る技能について10年(当該技能を要する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する者の場合にあっては、5年)以上の実務経験(外国の教育機関において当該建築又は土木に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

三 外国に特有の製品の製造又は修理に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該製品の製造又は修理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

四 宝石、貴金属又は毛皮の加工に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

五 動物の調教に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において動物の調教に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

六 石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

七 航空機の操縦に係る技能について250時間以上の飛行経歴を有する者で、航空法 (昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第十八項 に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの

八 スポーツの指導に係る技能について3年以上の実務経験(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間及び報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの又はスポーツの選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことがある者で、当該スポーツの指導に係る技能を要する業務に従事するもの

九 ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という。)に係る技能について5年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する次のいずれかに該当する者で、当該技能を要する業務に従事するもの

 イ ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」という。)において優秀な成績を収めたことがある者

 ロ 国際ソムリエコンクール(出場者が一国につき1名に制限されているものに限る。)に出場したことがある者  ハ ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む。)若しくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む。)又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者