「永住者」とは
「永住者」は、「法務大臣が永住を認める者」に付与されるビザ(在留資格)で、在留期間の制限なく日本で暮らすことが出来るビザです。通常、日本に滞在している外国人は日本での活動目的に応じた在留資格を持っており、原則としてその目的以外の活動を日本で行う事は許されませんが、「永住者」をもって日本に在留している外国人の方には、日本に在留中に行うことができる活動の範囲に制限がなく、どのような職業に就くことも可能(他の在留資格では禁止されているような業種も可能)になります。「永住者」をもつ外国人の方は一般的に、社会的な信用を得ることができ、ローン契約や保険の加入などの点で有利になります。また、「永住者」を持つ場合には、犯罪を行うなどして退去強制事由に該当した場合でも、在留を特別に許可される場合があり、有利に扱われることがあります。
「永住者」は、在留期間・在留活動に制限のない特別なビザであるため、通常のビザの変更と比較して慎重な審査を要することから、一般のビザの変更申請とは異なる規定が設けられています。
※永住と帰化申請の違いについては、コラム:帰化と永住の違いを参照してください。
申請のポイント
「永住者」をもって日本に在留している外国人には、在留期間や日本に在留中に行うことができる活動の範囲に制限がなく、無期限で日本に在留して、どのような職業に就くことも可能です。他の在留資格では働くことのできない職種、たとえばコンビニ店員(留学生などのアルバイトを除く)や日雇い労働、風俗店等での就労も可能になります。他ののビザと比較して、在留管理が大きく緩和されているといえます。そのため、出入国在留管理局は慎重な審査をする必要があり、他のビザの審査とは異なる規定に基づいて審査が行われます。
以下に「日本人の配偶者等」の申請のポイントを紹介します。
「永住者」を取得するための要件とは
よく外国人の方が「永住権を取得する」と言われますが、正確には、在留資格(ビザ)を「永住者」に変更する手続きの事を指します。外国人の方が「永住者」への変更申請をして許可を得るためには、様々な要件をクリアする必要があります。「永住者」の申請が許可されるかどうかは、「法務大臣が永住を認める者」と規定されているように、許可の諾否は法務大臣の自由裁量で決める事とされており、明確な基準とまでいえるものは存在しません。基本的には、申請をする外国人の方の日本での活動状況・在留状況・在留の必要性等を総合的にかつ公平に考慮して判断がなされます。永住許可に関するガイドライン(平成29年4月26日改定)に永住許可に関するガイドライン(法務省)が公開されています。ご参照ください。
永住許可申請の要件
- 素行が善良であること(素行要件)
- 独立生計を営むに足りる資産又は技能を有する事こと(独立生計要件)
- その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益要件)
- 身元保証人がいること
- 過去の申請と今回の申請に矛盾が無いこと
以下に、それぞれについて詳しく紹介します。
①素行が善良であること(素行要件)
「素行が善良であること」とは、具体的には、「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。」を意味します。つまり、日本の法律を守ることはもちろん、たとえ違法ではないとしても、他人に迷惑をかけるようなことをせずに、日本社会の一員として社会的に非難されることのない生活を営んでいることを意味します。永住許可申請では、申請人の過去の素行が非常に重要です。申請人に、過去に重大犯罪歴や入管法・旅券法違反がある場合には、原則として永住許可は認められません。そして、申請人が過去に日本に在留していたことがある場合には、前科だけでなく、過去の在留履歴、たとえば「留学」中の出席率、アルバイトの時間数(法定の時間数を超えて働いていないか)などの素行も厳しく審査されます。1つでも前科や不良歴があると永住許可申請が不許可になるわけではなく、今後日本で善良に在留することが書類から明らかであれば、永住許可の可能性はあります。このような場合には、専門家にご相談ください。具体的な不許可事例は「永住者」ビザの事例(リンク)を参照して下さい。具体的には、次の3つの条件いずれにも当てはまらないことが必要です。
a. 日本の法令に違反して、懲役、禁錮または罰金に処せられたことがある者(交通違反の罰金を除く)。
※ただし、次の場合には該当しないものとして扱われます。
- 懲役・禁固刑の執行を終えてから10年経過したとき
- 懲役・禁固刑の執行猶予を受けて、その執行猶予期間を経過したとき
- 罰金刑の執行を終えたとき
- 罰金刑の執行の免除を受けた日から5年経過したとき
b. 少年法による保護処分が継続中である者
c. 日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行うなど、素行善良と認められない特段の事情がある者
上記aには該当しない軽微な法令違反、たとえば交通違反などであっても、同様の行為を繰り返し行っている人や、迷惑行為などを繰り返し行っている人がこのcに該当します。
交通違反を例に挙げると、シートベルトの未装着や一時不停止などの違反ではそこまで審査に影響を及ぼすものではありませんが、明らかな故意による重大な違反(無免許運転・飲酒運転・大幅なスピード超過など)があると、「素行善良」と認められない可能性があります。
また、前科・前歴が無くても、資格外活動許可の制限時間を超えて就労を行った場合(たとえば、「留学」ビザの学生が週28時間の制限を超えてアルバイトを繰り返ししていた場合)にも「素行善良」と認められない可能性があります。
②独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」とは、具体的には、「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること」を意味します。つまり、生活保護を受給しておらず、現在および将来において公共の負担にならずに安定した生活をしていくことが可能と認められる必要があります。この独立生計要件は、必ずしも申請をする本人が満たしている必要は無く、世帯単位で判断されるので、申請人・配偶者など世帯全員の収入を合算して考えます。一般的には、世帯年収が300万円以上であることが目安になっていますが、300万円に満たない場合には必ず不許可になるということではなく、個別の事情を総合的に考慮して判断されます。
③その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(国益要件)
具体的には、以下のすべての条件にあてはまることが必要です。
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
つまり、3カ月以上の長期間日本を離れたり(海外出張など、合理的な理由がある場合を除く)せずに、10年以上日本に在留している必要があります。また、10年間のうち5年以上はいわゆる就労ビザで日本に在留している必要がります。
ただし、以下のケースでは、10年以上日本に在留していなくても永住許可の要件を満たす場合があります。
- 「高度専門職」 1年以上または3年以上
- 「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「特別永住者の配偶者の場合」
結婚して3年以上が経過し、継続して1年以上日本に滞在している場合 - 「定住者」 5年以上
- 「我が国への貢献」があると認められる者 5年以上
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。納税義務等公的義務を履行していること。
法令違反が無いのはもちろんのこと、税金・健康保険などの支払いといった公的義務を果たしている必要があります。
ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
申請をする人が、現在付与されているビザの在留期間の中で最長の期間を付与されている必要があります。ただし、現在は「3年」の在留期間が与えられている場合には、「最長の在留期間」が与えられているものとして扱われます。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
「公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと」とは、具体的には、感染症にかかっていたり、覚せい剤などの中毒者などに該当しないことを意味します。
④身元保証人が要ること
永住許可申請では、日本人もしくは「永住者」の在留資格をもつ外国人の方に身元保証人になっていただく必要があります。永住申請の際の身元保証人には、日本で安定した収入がある方にお願いをするのがよいでしょう。ただし、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」から永住許可申請をする方で、申請人本人の収入で生活を行っている場合は配偶者(日本人・永住者)が仕事をしていなくても身元保証人になることができます。
なお、永住許可申請の際の身元保証人は、「連帯保証人」等の一般的な保証人とは異なり、何らかの法的責任を負うものではありません。保証する内容は、「滞在費」「帰国旅費」「法令の遵守」の3つですが、仮に申請をする外国人の方が犯罪を犯した場合でも身元保証人に罰則はありません。そして、身元保証人の方が責任を追及されることもありません。
⑤ 過去の申請と今回の申請に矛盾が無いこと
永住許可申請では、過去の申請の内容と現在の申請の内容に矛盾が生じないようにする必要があります。過去の申請で誤った記載をしてしまい、現在の申請と矛盾があると、虚偽申請を疑われて不許可になってしまう可能性があります。たとえば、過去の申請(3年前)では未婚と記載しているのに、今回の申請では結婚して10年が経過していると記載していたりする場合には、たとえ悪意がなく単なる間違いだったとしても、虚偽申請を疑われてしまう原因になります。過去の申請内容に虚偽や誤りがある場合には、今回の申請にあたってその点をしっかりと説明する必要がありますので、行政書士などの専門家にご相談することをお勧めします。
「永住者」の審査期間
永住許可申請の審査期間は、「4ヵ月(標準処理期間)」とされていますが、実務上は6-8カ月程度の審査期間かかる場合が多いです。